「unaffected」ライナーノーツ by 鹿野淳(FACT)

最初にajapaiを知ったのは、こんな紹介からだった。
「ajapaiはね、世界に誇る2ステップ番長なんですよ」 いい響きだった。2ステップというのは、ドラムンベースとNY仕込みのハウスミュージックを融合し、そこにイギリ スの好景気が合わさって何だかとてもバブリーかつスタイル先行で流行ったダンス・ムーヴメントだ。もっと違う見方もあるが、少なくともそう映っていた僕にとって、2ステップに「番長」という言葉を合わせる感じは、熱の通り方がほどよかった。実際に聴いてみると、繊細なサウンドときめ細かなリズムのアンサンブルが心地よくて、しかも美しくて、何が番長なのかはちっともわからなかったのだが――。

このアルバムは2ステップという川からポップ・シーンという外洋に飛び出したajapaiのデカい懐が、優雅かつ豪快に鳴っているアルバムである。もともと2ステップというジャンルは、リズムではなく「歌」に重心が置かれている、ポップ・ミュージックに寄った音楽だ(クレイグ・デイヴィッドが2ステップから輩出されたのがいい例だ)。そこで鍛えられて番長となったajapaiが、自らの音楽を確立せんと作品に向かった時点で、こういう「豪華絢爛ダンス・ポップ大全集」になるのは必然だったと思う。

NYを拠点に活動していたこと、および、そこでの坂本龍一やテイ・トウワとの出逢い、そして平井堅を始め異常に豪華なクレジットが集まるリミックス・ワークス等々、ajapaiの奔放さや確かなセンスを裏付けるものは事欠かない。しかし、話題や作品が何かに収束せずに散らばっていたことも、また事実である。 このアルバムは、ajapaiがダンス・ミュージックの狂気と華やかさでポップを自由に操れることを、がっしりと告げるアルバムである。そういうアーティストが他にいるか?――それはいる。いるよ。ファンタスティック・プラスティック・マシーン然り、モンドグロッソ然り、そしてテイ・トウワ然り。 しかし、実のところこの国はまだまだハウス・ミュージックやダンス・ミュージックをナメている。これらの音楽がポップ・フィールドでできることを勝手に決めつけてしまい、自ら枠を小さくしている。まだまだこんなもんじゃないし、もっともっと素晴らしいアーティストが登用されるべきフィールド、それがダンス・ポップ・フィールドだ。 今回のajapaiのスタンスは、今までの「ダンスとポップの融合」と比べて邦楽アーティストとのがっつりした関係が鳴っている。それは逆輸入アーティストとも言えるajapaiの邦楽シンガーへの信頼であり興味の表われなのだろう。そういう意味で、このアルバム以降のリズムと日本語メロディーの新しい地平線が、シーン全体を通して広がりそうな予感に満ちている作品でもある。

ajapaiは、何度目かの「夜明け」である。ここに収められた素晴らしく張りのある何人かのシンガーとのコラボレート・ソングスは、ajapai独自の「肝」によって作られた、洗練されたソウルの結晶である。世界中のハピネスが集まるに十分なメロディーとビートが、ここで気持ちよさそうに踊っている。

鹿野淳(FACT)